映画を見た。 『Red』

Red、 or Shape of Red、 (or House Wife)

という映画を観た。ここ異国で日本映画を映画館で鑑賞する機会は当然ながら限定されるのだが、時々このように上映してくれる映画館がある。
邦画でも海外の聴衆をしっかり意識して作られている映画、国際映画祭に出品されるような、是枝監督作品とか、河瀬監督作品などが結構劇場で観られる。
ちょっと前であったらDrive My Carも劇場でやっていたが、これは見逃してしまった、とても残念。

で今回はこのRedという映画を観たわけ。

 

全く事前情報ナシで観に行った。奥さんに連れられて出かけていったので。
映画館に着いて、着席して、広告の類がすべて終わって、映写室が完全に暗くなって、さあ始まった。

と思ったら、銀幕に映写されたのはなにか全く別の外国ムービー。 シマッタ、映写室マチガエた! ということであたふたと上映室1を飛び出し、上映室2に暗闇の中滑り込む。なにやってんだ。

で、やってました、日本の風景らしい中お母さんと子供が手を繋いで歩いてる、冒頭のシーンには間に合った。フー。

日本では2020年に公開された映画なんですね、2年前の映画を今やっている。まあ外国ですから。

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感想は・・・。

ひとことで言えば、なんか古く臭い(よく言えばレトロな)映画だなあ、と思った。

これって、かなり狙って表現されているのですかね。 映画のストーリーである破滅的不倫(少なくても映画のストーリーはそのように見える)にすごくマッチしているようには感じました。

もっと言えば不倫というより、駆け落ち心中的な昭和レトロの匂いのプンプンする作品。意地悪く言えば完全に80年代女性コミック、メロドラマ風。絶対に昔見たことある表現ばっかり。不倫相手が白血病(だっけ?)で具合が悪く、白い雪に吐血する場面なんて、言ってみれば時代劇でヒロインが『ああ、持病の癪が、、』なんていって倒れ込む、のとそう大差ないレトロ表現だしね。

映像の端々に出てくる赤色”RED"の表現もとてもクラシック。
なにかの焼き直し、的な思いが常に駆け巡る映画でありました。切ない恋愛でテーマが赤、とくれば50代半ばから上の年齢の人々には『赤いシリーズ』を思い出しちゃう、といえば分かるかな。

全く新しいことはナイ、かといってそれが悪いわけでもない、かと。
原作は読んでいないので、気になります。

ただ海外で上映される、という観点から考えると結構よくできているとは思いました。

古臭い表現ではあるんだけれど、日本の姑付き専業主婦の家庭の状況とか、その食卓風景とか(どういうクリスマスの祝い方しているんだろうとか)。設計事務所の風景及び仕事の仕方とか、旦那の仕事がらみの社交パーティの状況とか、そのとき女性達が着ているドレスのデザインとか、アフター5の会食が屋形船、とか。
あるいはその後のデートがバッティングセンターであるとかもそう。悲劇のヒロイン、じゃなかったヒーローが乗っているクルマも80年代(と思う)のボルボだしね。

日本人であるワシにはもうどれもコレも80年代のメロドラマのシーンにしか写らないのだが、海外の人たちには日本の社会の姿として新鮮に写っているとは思う。
新潟の白一面の雪景色は美しいし、異国情緒たっぷりです。本編のテーマ色、赤、ともすごく良い対比ですし。


肝心の性描写のシーンは彼らにどう写ったんでしょう? ワシには知る由もありません。
個人的には、特に感想ナシ! いや特段に過激でもなく、あからさまでもなく。驚きはない。もう少しなんとかならなかったのか、とは思います。 でも、商業的には妻夫木聡という俳優さんをこの役に起用しただけで一応大きな成果はあった、んでしょうか。

以上、スミマセン、ネガティブ感想の列挙のような事になってしまった。非常にモヤモヤ感の残る映画なのでした。

でもそれが制作側の狙いなのかしらん。

古臭い、使い古された、なんて難癖をつけちゃいましたがそんな表現で合点がいくのが、ニッポンの専業主婦の立場は今も昔もあまり変わってないんだよねー、というメタファーか。

失われた30年なんて表現が日本社会でよく使われるが(経済成長とか景気のことを話すときだけど)、社会構造自体も実はあまり変わってないんだよね〜、という皮肉が込められているとしたら、なんとなく頷けてしまうのでは有りました。